FX送金はどこまでチェックされる?税務署の突合実務
前編で触れたとおり、100万円超の国外送金や海外からの受け取りは、金融機関が税務署に対して「国外送金等調書」として報告することが義務づけられています。では実際に、これらの情報はどのように税務署の調査に活用されるのでしょうか?
まず、税務署はこの調書を個人ごとに年単位で照合し、確定申告との突合チェックを行います。仮に、海外FX業者からの出金額が300万円だったにもかかわらず、確定申告書にはその所得が一切反映されていない場合、「未申告」の疑いが浮上します。この段階ではすぐに調査対象になるとは限りませんが、数年にわたって同様の傾向が見られれば、税務調査の候補に挙がる可能性が高くなります。
また、複数の年にわたって分割出金や複数口座の利用などが見られた場合、「意図的な逃れ」とみなされるリスクも出てきます。調査の際には、FX取引の記録、出金履歴、本人の説明などが総合的に求められ、場合によっては追徴課税・加算税・延滞税が課せられることになります。
納税者が取るべき対策とは?リスクを減らす備え方
国外送金等調書は、あくまで金融機関側の義務として提出されるものであり、納税者自身が提出するものではありません。しかし、送金を受ける側としての「準備」と「説明責任」は避けられません。とくに海外FXを利用して利益が出た場合、以下のような対応が重要です。
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定期的に取引履歴・口座履歴を保存する
海外FX業者の管理画面から、取引履歴・出金履歴をダウンロードして保管しておきましょう。税務署に対して出金の正当性を説明する際に必要です。 -
申告基準を理解し、正しく確定申告する
海外FXの利益は「雑所得」として総合課税されるのが原則です。損失の繰越控除は不可であり、他の所得との合算によって税率が変わることもあります。正しく申告することで、後日のトラブルを回避できます。 -
送金理由が複数ある場合は明確に区分けしておく
たとえば、出金だけでなく、家族送金や留学費用なども含まれる場合、それぞれの目的を証明できるように記録を分けておきましょう。
これらを丁寧に対応することで、調査対象となった場合にも「説明責任を果たせる納税者」として扱われ、無用な誤解や追及を避けることができます。
まとめ
国外送金等調書は、海外FXを利用する人にとって「無関係ではいられない制度」です。100万円を超える出金や入金は、たとえ本人が申告していなくても金融機関から税務署へ自動的に報告されています。
こうした制度のもとで、適切な記録と確定申告を行わずに利益を得続けることは、非常にリスクが高い行為です。納税者としての義務を果たしながら、必要な備えをしておくことで、税務調査のリスクを最小限に抑え、安全にFX取引を継続することが可能になります。
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