単一ロジックの限界と“マルチ戦略EA”の必要性
FXの自動売買において、単一の戦略だけで相場に対応するのは非常に困難です。理由は明確で、市場環境が常に変動し、トレンド相場・レンジ相場・高ボラティリティ・低ボラティリティなど、状況によって機能するロジックが異なるためです。
たとえば、トレンドフォロー型のEAはレンジ相場でドローダウンしやすく、逆に逆張り型はトレンド相場で大きな損失を被ることがあります。そうした「どちらも正しいが、場面によって使い分けるべき」ロジックの存在が、単一戦略の限界を象徴しています。
こうした背景から、複数の戦略を組み合わせた“マルチ戦略EA”の重要性が高まっています。異なるロジックを並行稼働させることで、相場環境に応じた“切り替え”や“分散”が可能となり、安定した収益性が期待できるのです。
ChatGPTを活用したロジック発案と分類のコツ
マルチ戦略EAを作成するにあたり、最初のステップは「どんなロジックを作るか」の発案と分類です。ここでChatGPTを活用することで、人間の発想に偏らない多角的なロジック構成が可能になります。
たとえば以下のようなプロンプトでアイデアを引き出せます:
- 「トレンド相場に強いロジックを5パターン考えて」
- 「ボラティリティ急変時に対応できるEA構造を提案して」
- 「月曜早朝のギャップに注目した戦略を教えて」
さらに、ChatGPTに「分類軸」を設計させることも効果的です。以下のような視点を軸として複数のEAを設計できます:
- 時間帯別戦略(ロンドン市場/ニューヨーク市場など)
- ボラティリティ別戦略(高・中・低)
- イベント対応戦略(経済指標発表前後)
この段階では“ロジック生成より分類の質”が成否を分けるため、ChatGPTには「分類しやすい特徴ごとに戦略を考える」ようなプロンプトを使いましょう。
マルチ戦略EAの構造パターンをChatGPTに設計させる
ChatGPTに複数のロジックを作らせた後、それらを一つのEAとして統合する構造設計が必要になります。この部分にもChatGPTを活用することで、「単純なロジック並列」から「条件分岐型の柔軟構造」へと進化させられます。
たとえば次のような統合方法があります:
- ロジックを切り替えるタイプ:相場条件に応じてロジックA/B/Cを使い分ける。
- ロジックを同時稼働させるタイプ:リスク配分を設定し、各ロジックを同時運用。
- 評価型切替タイプ:一定期間ごとの成績をもとに稼働ロジックを入れ替える。
この構造設計をChatGPTに指示する際は、「複数のEAを統合する構造をコードで設計して」と伝えれば、条件分岐と変数管理を含めたコード設計をしてくれます。
以降では実際にこのような構造を使ったマルチ戦略EAの具体的なコード例と、検証手順、運用時の注意点などを詳しく解説します。
ChatGPTによるEAコードの統合と変数管理
前編で分類・構造設計までを行ったマルチ戦略EAですが、実際に稼働させるには各ロジックのコードをどのように統合するかがカギとなります。ここでは、ChatGPTに依頼して「戦略ごとにモジュールを定義し、統括コードで呼び出す」形を採用すると、柔軟かつ管理しやすい構造になります。
具体的には以下の構成です:
-
strategyA()
,strategyB()
など各ロジックを関数化 -
market_condition()
関数で現在の相場状況を判定 -
main()
関数で有効な戦略を選定・実行
このように構造をモジュール単位で明確に分けることで、バックテスト時の精度管理、戦略ごとのON/OFF制御も行いやすくなります。変数の管理についても、グローバル変数を避け、各戦略ごとに独立させる設計が安全です。
最適化とのバランス設計とChatGPTの使い方
マルチ戦略EAの最大の落とし穴が「過剰最適化(オーバーフィッティング)」です。特にロジックが複数あると、それぞれに最適化を行いたくなりますが、パラメータが増えるほど過剰最適化のリスクも増大します。
ChatGPTには以下のようなプロンプトで“過剰最適化を避ける構造”を提案させることが有効です:
- 「変数数を抑えた最小構成でパラメータ設計して」
- 「汎用性重視のロジックチューニング方針を考えて」
- 「テスト期間ごとの成績差を分析して構造を評価して」
また、戦略ごとに「検証期間のずらし」「ドローダウン時の反応設計」などを組み合わせることで、“ロジックの相関を避けたポートフォリオ”を形成できます。
まとめ:ChatGPTで“ロジック開発の地力”を鍛える
マルチ戦略EAの開発は、単にコードを組み合わせるだけでは成立しません。構造設計、ロジック分類、運用方針、パラメータの設計思想といった複雑な要素を整理し、論理的に構築する必要があります。
その中でChatGPTは、「アイデア生成の幅出し」「コード統合のガイド」「戦略設計の視点提供」として非常に強力な支援者となります。ただし、最終的な構造の妥当性やバックテストの整合性は、あくまでトレーダー側が評価・調整する必要があります。
ChatGPTを“実装補助ツール”として使うにとどまらず、“戦略思考を高めるパートナー”として捉えることで、EA開発者としての地力も大きく成長できるはずです。
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