バックテスト性能と戦略設計への影響
EAの性能を事前に評価するうえで欠かせないのが「バックテスト」です。MT4とMT5ではバックテストの性能や精度に大きな違いがあり、戦略設計そのものに影響を及ぼします。
MT4のバックテストの特徴
-
単一スレッドのためテスト速度が遅い
-
モデリング精度は3段階(オープン、コントロール、すべてのティック)
-
過去ティックデータは外部から入手しないと精度が落ちやすい
-
複数通貨・複数戦略の並列検証が不可能
MT5のバックテストの特徴
-
マルチスレッド&クラウド最適化で処理が高速
-
標準で高精度なティックデータが使用可能(Every Tick Based On Real Ticks)
-
マルチカレンシー対応、複数戦略を同時に検証可能
-
最適化パラメータの比較・分析が視覚的に整理されている
EAを戦略的に設計し、パフォーマンスを科学的に評価したい開発者にとって、MT5のテスター環境は非常に強力な武器になります。
実運用時のコスト構造とプラットフォーム選択
開発だけでなく、運用時のコストやサポート体制もプラットフォーム選びの重要な判断材料です。
ブローカーの対応状況
-
MT4は今なお広く使われており、多くのブローカーがサポート
-
MT5は主要ブローカーでの対応が進むが、MT4限定のEA資産が多いため移行の進みは遅め
-
複数口座運用や資金分散を前提とするならMT4が便利なケースも
VPSとの親和性
-
MT4は軽量で、スペックの低いVPSでも安定稼働しやすい
-
MT5はリソース消費がやや大きいため、高性能な環境を前提とする場合がある
システム更新と将来性
-
MetaQuotesは公式にはMT4の機能更新を終了しており、新機能やサポートはMT5に集中
-
長期的な開発視点では、MT5への移行は避けられない流れ
まとめ
EA開発において「MT4とMT5のどちらを選ぶべきか」という問いには、正解は一つではありません。開発者としての目的、使いたい戦略の複雑さ、バックテスト環境の重視度、さらにはブローカーや運用コストの観点まで含めて総合的に判断する必要があります。
もし、すでに安定稼働しているMT4資産があるのであれば、その継続運用を前提にするのも合理的な選択肢です。一方、今後の拡張性や高度な検証を重視するなら、MT5環境への対応は避けては通れないテーマです。
この2つの選択肢を理解し、自分の開発目的に最適な道を選ぶことが、EA開発者としての第一歩になります。
コメント