移動平均線とは?基礎から理解する
テクニカル分析における「移動平均線(Moving Average、略称MA)」は、チャート分析の中核を担う最も重要な指標の一つです。ローソク足と並んで、最初に学ぶべき分析ツールとして知られています。
移動平均線は、一定期間の終値の平均を折れ線グラフとしてチャート上に描いたものです。たとえば「25MA」は、過去25本分の終値の平均をつなげて表示します。これにより、相場の大まかな流れ(トレンド)を視覚的に把握することができます。
種類と特徴
移動平均線には主に以下の3種類があります:
- 単純移動平均線(SMA):指定した期間の終値を平均したもの。最も基本的で多くのトレーダーが使用。
- 指数平滑移動平均線(EMA):新しいデータに比重を置いた移動平均。変化に敏感で短期トレード向き。
- 加重移動平均線(WMA):期間内の各データに重みをかけて平均。EMAよりやや複雑。
本記事では、まずはSMAとEMAを中心に実戦的な違いを理解し、それぞれの特性を使い分けるための前提を解説します。
期間ごとのMAが意味すること
移動平均線は「期間」によって性質が異なります。期間の設定は、分析者の時間軸とトレードスタイルに直結します。
- 短期MA(5〜20日):価格に敏感でタイミング取り向き。デイトレやスキャルに利用。
- 中期MA(25〜75日):トレンドの形成を把握。スイングトレードで重要。
- 長期MA(100〜200日):相場の大局観を捉える。ポジショントレードや機関投資家が注目。
たとえば「75日線を上抜けた=中期トレンドの上昇転換サイン」といった判断基準が生まれます。
ゴールデンクロス・デッドクロスの意味と誤解
移動平均線を使った代表的なサインが「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」です。
- ゴールデンクロス:短期MAが長期MAを下から上に抜ける → 上昇サイン
- デッドクロス:短期MAが長期MAを上から下に抜ける → 下落サイン
ただし、この2つは「発生時点ではすでにトレンドが進行していることが多い」ため、遅行性がある指標であることを忘れてはなりません。
以降ではこれらのMAをどうやって実戦で活用するか、他のテクニカルとどう組み合わせて使うかなど、実践力を養う視点に切り替えて解説します。
移動平均線を使った実戦トレード戦略
前編では移動平均線の基礎や種類、サインの解釈について整理しました。後編では、それらをどうトレードに活かすか、実戦的な使い方を深掘りしていきます。
移動平均線の反発を狙う「押し目買い・戻り売り」
MAは「動くサポート/レジスタンス」として機能します。価格がMAに近づいたときに反発することが多く、そこでのエントリー戦略が定番です。
- 押し目買いの例:上昇トレンド中の25MA付近で反発を確認 → ロングエントリー
- 戻り売りの例:下降トレンド中の75MAに戻ったところで反発確認 → ショートエントリー
このように、MAを「基準線」として使うとエントリーの精度が上がります。
複数MAの組み合わせでトレンドを判断
トレードにおいては「単一のMA」よりも「複数のMA」を使うことで精度が向上します。代表的な組み合わせは以下のとおりです:
- 短期(5MA)+中期(25MA)+長期(75MA):3本が同じ方向に並んでいると「トレンドが明確」な状態
- パーフェクトオーダー:短→中→長の順で整列していると、トレンドの信頼性が高い
- クロス+トレンド方向一致:短期が中期を上抜けるだけでなく、長期も上向きなら上昇トレンドの信憑性が増す
こうしたMAの「位置関係」と「傾き」は、視覚的に非常に強力な情報源になります。
MAと他インジケーターの組み合わせ術
移動平均線単体でもトレードは可能ですが、他のテクニカル指標と併用することで相場判断の信頼度が向上します。
RSIとの組み合わせ
- RSIが70以上 → 買われすぎ
- RSIが30以下 → 売られすぎ
このようなRSIの過熱感と、MAの位置関係(たとえば、25MAを大きく上抜けている)を組み合わせることで「反転のサイン」を読み取ることができます。
MACDとの組み合わせ(次回記事と連動)
- MACDがゼロラインを上抜けているか
- シグナルとのクロスは起きているか
MACDはトレンドの強さと転換点を捉えるため、MAの傾きやゴールデンクロスとセットで確認すると、精度が高まります。
まとめ
移動平均線は、シンプルながら多くのトレーダーが見ている“共通認識”の指標です。短期〜長期のMAを組み合わせることで、以下のような多層的な分析が可能となります。
- 相場の方向性と傾きの確認
- 押し目・戻りのエントリーポイント判断
- トレンド転換の兆しの察知
これらをマスターすることで、チャートを読む力が格段に向上します。次回は「MACDの見方と使い方の基礎」を扱い、移動平均線の概念を内包するインジケーターとしてより高度な判断に進みます。
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