ChatGPTでインジケーター開発が身近になる時代へ
テクニカル指標はトレーダーにとって重要な武器ですが、「既存インジでは満足できない」と感じる中上級者も少なくありません。特に、独自戦略を持つトレーダーにとっては、「自作インジケーターの開発」が次の一手となることもあります。
しかし、Pine ScriptやPythonといった言語に不慣れな場合、開発ハードルは高くなりがちです。ここで登場するのがChatGPT。自然言語で仕様を伝えるだけで、Pine Scriptの雛形コードを出力してくれるため、誰でもインジケーター開発の第一歩が踏み出せるようになりました。
前編では、まず「ChatGPTにできること/できないこと」を明確にしながら、Pine Scriptを使った自作インジの基本的な流れを解説します。後編では、実際の事例や注意点、応用的な活用例を紹介していきます。
Pine Scriptとは?TradingViewで動く軽量スクリプト言語
TradingView上でインジケーターや戦略の開発に使われているPine Scriptは、軽量で簡潔な文法が特徴です。特に「視覚化」や「既存インジの組み合わせ」など、視覚的なトレード判断を補助する機能に強みがあります。
代表的な構文は以下のような形になります:
pinescript//@version=5 indicator("My EMA", overlay=true) emaShort = ta.ema(close, 12) emaLong = ta.ema(close, 26) plot(emaShort, color=color.blue) plot(emaLong, color=color.red)
こうした簡潔なコードであっても、トレンド分析、クロス判定、アラート設定まで対応可能です。
ChatGPTを活用すれば、こうしたコードの「骨組み」を自然言語から構築できるため、Pine Scriptに慣れていない人でもすぐに形にすることができます。
ChatGPT×Pine Scriptのワークフローを理解する
以下は、ChatGPTと連携してインジケーターを開発する一般的な流れです:
- 実装したいロジックを自然言語で説明する(例:「EMAクロスでアラートを出すインジケーターを作って」)
- ChatGPTがPine Scriptのコードを生成する
- TradingViewにコードを貼り付けて動作確認する
- エラーが出たらChatGPTに質問して修正してもらう
- 表示の微調整や条件分岐などを追加して仕上げる
ポイントは「一発で完成させようとしないこと」です。ChatGPTはあくまで“骨組み構築”に強く、調整や改良は対話を重ねてブラッシュアップしていくイメージです。
以降では「具体的なロジック事例」「複雑な条件の組み方」「注意すべきエラー回避」など、実用面の応用を詳しく解説します。
よくあるロジック事例と生成パターンの工夫
前編では、ChatGPTとPine Scriptの基本的な連携方法を紹介しました。後編では、より実践的な視点から、「どういうロジックが人気か」「実装時に工夫すべきポイントはどこか」を具体例を通じて見ていきます。
よく使われるインジケーターの例としては、以下のようなパターンがあります:
- EMAクロスによるトレンド転換検出
- RSIの閾値判定+背景色変更
- ボリバンのバンド幅を利用したボラティリティ警告
- MACDとADXを組み合わせたトレンド継続判定
- 時間帯ごとの価格ゾーンハイライト(ロンドン・NY時間など)
これらのうち、「複数条件を組み合わせたアラート」や「視覚的強調表示(背景色・ラベルなど)」は、ChatGPTにうまく指示すれば自動生成が可能です。
ポイントは、「どういう条件で表示したいか」「何を表示したいか」を具体的に伝えること。たとえば:
「EMA12とEMA26のクロスで、ゴールデンクロス時は緑色の矢印をチャート下に表示。デッドクロスは赤色の矢印をチャート上に。」
このように条件と視覚効果をセットで指示することで、ChatGPTの出力精度が大きく向上します。
エラー対処とコード改善のプロセス
Pine Scriptはバージョンの違いで構文が異なることがあり、ChatGPTが出力したコードで「エラー」が発生することも珍しくありません。その際は以下のようなアプローチが有効です:
- バージョンを明示する:「Pine Script v5で書いて」と指示すると、最新構文に準拠したコードが出力されやすくなります。
- エラー文をそのまま貼る:ChatGPTに「このエラーを直して」と伝えると、該当箇所の修正案を提示してくれます。
- 構文解説を求める:初心者の場合は、「このコードの意味を教えて」と頼むことで、学習しながら改善が可能になります。
また、ChatGPTは「構文の意味」や「条件式の動作確認」についても説明できるため、「なぜこう書くのか?」という学びの深堀りにも使えます。
コード例の改良
以下は、EMAクロスの基本コードと、その改善パターンの例です。
基本コード:
pinescript//@version=5 indicator("EMA Cross", overlay=true) ema1 = ta.ema(close, 12) ema2 = ta.ema(close, 26) crossUp = ta.crossover(ema1, ema2) crossDown = ta.crossunder(ema1, ema2) plotshape(crossUp, location=location.belowbar, color=color.green, style=shape.labelup, text="Buy") plotshape(crossDown, location=location.abovebar, color=color.red, style=shape.labeldown, text="Sell")
改善の方向性:
- 背景色変更やラベルサイズの指定を追加
- 特定時間帯のみのアラートに絞る
- 他のインジケーターとの併用条件を追加
こうした改善要望をChatGPTにそのまま伝えることで、次々とバージョンアップしたコードが得られます。
まとめ
ChatGPTとPine Scriptを連携させることで、自作インジケーター開発のハードルは大幅に下がりました。「知識ゼロからでも始められる」「エラーも対話で解消できる」「表示の改善も即反映できる」といったメリットは、トレーダーにとって非常に大きな武器になります。
また、慣れてくるとChatGPTを「開発パートナー」として扱う感覚に近くなります。「こうしてみたらどうか?」と試行錯誤しながら、使い勝手の良いインジケーターが生まれていく過程自体が、トレードに対する理解やスキルアップにもつながっていきます。
独自性あるインジケーターが欲しい方、ChatGPTとの連携を試したい方は、まずは基本のロジックから始め、少しずつ条件を追加・改善していく流れをおすすめします。
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