失業とFX破綻で“詐欺側”に…私が闇勧誘に手を染めた理由

なぜ私が“FXで食べていく”と決めたのか

Mさん(仮名)は地方の中小企業に勤めていた30代男性。新型コロナの影響で業績が悪化し、突然のリストラに遭いました。手取り20万円程度の生活に慣れていたMさんにとって、急な失職は「とりあえずバイトしながら凌ぐ」には年齢的にも精神的にも厳しいものでした。

そんな中、ネットで見つけたのが「スマホ一台で月収100万円」「副業FXで人生逆転」といった刺激的な言葉。Mさんは「とりあえず勉強代」として10万円を海外FXに入金。結果的に一週間で溶かしてしまいましたが、最初のトレードで一時的に3万円の含み益を出した経験が忘れられず、「やれば勝てる」と錯覚してしまったのです。

失業保険や一時的なアルバイトの収入を元手に、Mさんは「FXで稼いで復活する」という夢にしがみつくようになります。

借金に手を出したあと、崩れていった人間関係

ハイレバレッジでのトレードを繰り返した結果、Mさんの口座は何度もゼロに戻り、次第に手元の資金は尽きていきます。そこで彼が取った行動は、消費者金融からの借入れでした。「1回勝てば返せる」という気持ちで、初めは少額を借り、次第に借金は3社で100万円以上に膨れ上がっていきます。

さらに、支払いのために友人にお金を借りたことをきっかけに、人間関係にもヒビが入り始めました。最初は応援してくれていた家族も、「もうやめたら?」と心配するようになり、Mさんは誰にも相談できず孤立していきます。

やがて、支払いが滞り督促が届くようになった頃、Mさんは“ある言葉”に引き寄せられます。「一緒に稼げるチームがある」「FXで勝てない人には裏技がある」。それが、後に彼を“闇の勧誘側”へと誘うきっかけとなるのです。


“勧誘する側”の世界と、その実態

Mさんが出会ったのは、「FXスクール」を名乗るSNSグループでした。入会金は10万円、月額サロン費用は1万円。提供されるのは、ネットで拾えるような基本的なFX講座と、勝率の曖昧な「必勝パターン」でした。

しかし、Mさんが徐々に気づいたのは、スクールの収益の中心が“会費”と“紹介料”であること。メンバーが新しい人を勧誘し、その紹介料として3万円〜5万円の報酬がもらえる仕組みです。つまり、実際のトレードではなく、新規会員を増やすことが目的になっていたのです。

最初は罪悪感を覚えつつも、自分が“元手を取り戻すため”に他人を勧誘し、SNSで偽の利益画面を載せて集客するようになります。やがて、自分の言葉で夢を語れるようになり、仲間内で称賛されることが心の支えとなっていきました。

破綻と再起|“誰かの金で稼ぐ”ことの虚しさ

そんな生活が1年近く続いたある日、Mさんのもとに警察から事情聴取の要請が届きます。ある被害者が「騙された」として詐欺被害届を提出していたのです。

結果として、Mさんは「詐欺目的とは言えないが、誤解を招く勧誘行為」として指導を受け、金銭的返金には応じることになります。この経験を機に、彼は初めて“人を騙していた”ことに向き合い、自ら闇を暴く側に回る決意をします。

その後、地元のNPO団体とつながり、SNSでの被害防止発信や講演活動をスタート。今では「二度とあの世界に戻らない」と語るMさんですが、「再起には“自分の言葉”で謝罪し、行動を変える勇気が必要だった」と振り返ります。


まとめ

本記事では、失業からFX依存に陥り、やがて勧誘詐欺の片棒を担いだ男性Mさんの体験を通じて、「人を巻き込んでまで稼ごうとする心理」と「再起のプロセス」を描きました。

再起の鍵は、“自分がされたこと”を“誰かにしない”と誓うこと。そして、それを実際の行動に移す勇気です。闇に落ちても、そこから這い上がる道はあります。この記事が、同じように悩んでいる人にとって、小さな光になることを願っています。


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