“勧誘する側”の世界と、その実態
Mさんが出会ったのは、「FXスクール」を名乗るSNSグループでした。入会金は10万円、月額サロン費用は1万円。提供されるのは、ネットで拾えるような基本的なFX講座と、勝率の曖昧な「必勝パターン」でした。
しかし、Mさんが徐々に気づいたのは、スクールの収益の中心が“会費”と“紹介料”であること。メンバーが新しい人を勧誘し、その紹介料として3万円〜5万円の報酬がもらえる仕組みです。つまり、実際のトレードではなく、新規会員を増やすことが目的になっていたのです。
最初は罪悪感を覚えつつも、自分が“元手を取り戻すため”に他人を勧誘し、SNSで偽の利益画面を載せて集客するようになります。やがて、自分の言葉で夢を語れるようになり、仲間内で称賛されることが心の支えとなっていきました。
破綻と再起|“誰かの金で稼ぐ”ことの虚しさ
そんな生活が1年近く続いたある日、Mさんのもとに警察から事情聴取の要請が届きます。ある被害者が「騙された」として詐欺被害届を提出していたのです。
結果として、Mさんは「詐欺目的とは言えないが、誤解を招く勧誘行為」として指導を受け、金銭的返金には応じることになります。この経験を機に、彼は初めて“人を騙していた”ことに向き合い、自ら闇を暴く側に回る決意をします。
その後、地元のNPO団体とつながり、SNSでの被害防止発信や講演活動をスタート。今では「二度とあの世界に戻らない」と語るMさんですが、「再起には“自分の言葉”で謝罪し、行動を変える勇気が必要だった」と振り返ります。
まとめ
本記事では、失業からFX依存に陥り、やがて勧誘詐欺の片棒を担いだ男性Mさんの体験を通じて、「人を巻き込んでまで稼ごうとする心理」と「再起のプロセス」を描きました。
再起の鍵は、“自分がされたこと”を“誰かにしない”と誓うこと。そして、それを実際の行動に移す勇気です。闇に落ちても、そこから這い上がる道はあります。この記事が、同じように悩んでいる人にとって、小さな光になることを願っています。
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