実践ステップ:損益調整をどう進めるか?
前編で整理した通り、年末の損益調整は「その年の利益に対して、年内に損失をぶつける」ことで税額を減らすという戦略です。ここでは具体的にどのように進めればよいのか、段階的に見ていきましょう。
1. 年間の確定損益を集計する
まずは、1月1日から現在までのトレードで「すでに確定した利益・損失」の合計を確認します。MT4やMT5の取引履歴、各海外FX業者のマイページでダウンロードできる明細を使って、実績ベースで収支を集計しましょう。
2. 含み損益をチェックして調整候補を洗い出す
次に、保有中のポジションについて、現在の含み損益を確認します。特に含み損のあるポジションは、「決済して損を確定することで税金を減らせる」調整対象となり得ます。
3. 調整実行の判断基準を明確に
「どのポジションを年内に決済するか」は、次のような観点から判断すると実務的です。
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すでに回復が見込めないと判断した損失
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将来性はあるが、年内に確定して再エントリー可能なもの
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税金の削減効果と、相場回復の期待を天秤にかけて選定
4. 必要なら再エントリー戦略も検討
ポジションを一度決済して損失を確定させた後、同じ水準で再度ポジションを取る「再エントリー」は、実質的にポジションを保ったまま損益を年度で切る手段です。ただしスプレッドコストや変動リスクもあるため、注意が必要です。
調整で失敗しないための注意点とQ&A
損益調整にはリスクも伴います。よくある疑問とそのポイントを整理しておきましょう。
含み益をあえて年内に決済する必要はある?
含み益を年内に確定して税金が増える場合は、基本的には決済しないほうが税務上は有利です。ただし、相場変動が予測される場合や、必要資金を確保したい事情があれば例外です。
決済を忘れて年を越した場合、どうなる?
海外FXの損益は暦年単位で処理されます。したがって、年末時点で未決済の含み損は「存在しなかったもの」として翌年に引き継がれ、今年の税務処理には使えません。結果的に“損失をムダにする”ことになります。
調整対象の判断が難しい場合は?
中途半端な決済で調整を誤るよりも、全体の利益額と納税額を概算したうえで、調整の必要が本当にあるのかをまず見極めましょう。無理に損失を確定させて再エントリーで不利になるケースもあります。
まとめ
海外FXでは、「その年の収支をその年のうちに確定させる」ことがすべてです。国内FXのように損失の繰越や損益通算が効かないため、年末の損益調整が直接的に納税額に跳ね返ります。
今年の収益が多かった人ほど、損益調整の判断が節税に大きく影響します。含み損の有無や、再エントリーの可否を含めて総合的に判断し、必要であれば実行に移すことが重要です。
判断に迷う場合は税理士に相談するのも一手。手間をかける価値がある、海外FXならではの年末タスクといえるでしょう。

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