「複数口座運用」でBAN?海外FX業者が警戒する“口座分散EA”のリスク

なぜEAを複数口座で動かすのか?その意図と戦略

自動売買(EA)を複数口座で同時に動かす手法は、リスク分散裁定的な利益の追求を目的に活用されることがあります。たとえば、同一EAを複数業者の口座で稼働させることで、各業者のスプレッド差やサーバー遅延を突いた戦略が可能になります。これは一種のアービトラージ(裁定取引)に近い手法といえます。

他にも、以下のような目的で複数口座運用が行われます。

  • リスクヘッジ:1つの口座がロックされても他が残る

  • 条件比較:業者間の約定力やスプレッドを比較しやすくする

  • バックアップ:メイン口座とは別にリスク回避用を用意

  • EAごとの専用環境構築:異なるEAを別口座で運用し、履歴管理や最適化をしやすくする

こうした運用は一見合理的ですが、一部の業者では不正とみなされるリスクがあるため注意が必要です。特に、「同一取引を複数口座で同時に行う」といった行動は、業者にとってサーバー負荷やLP(流動性提供者)との契約上のリスクを招くことになりかねません。

海外FX業者はなぜ“口座分散EA”を嫌うのか?

海外FX業者が「複数口座EA」運用に対して警戒する理由は、主に以下のようなものです。

サーバー負荷とLPへの悪影響

EAが複数口座で一斉に同様の注文を発行すると、短時間で大量の注文が同時に発生し、業者のサーバーに大きな負荷がかかります。また、業者はLPに注文を流して成立させる(STP/ECN方式)ため、同じような注文が集中するとLPがリスクを嫌い、注文を拒否するケースも出てきます。

その結果、業者としては次のような対応をとる可能性があります。

  • 「不正取引」と判断し、利益を取り消す

  • 出金制限・口座凍結を実施

  • 同一人物による複数口座運用を規約違反としてアカウント停止

利益の一極集中がシステム全体のバランスを崩す

特定のトレーダーがEAを使って裁定取引を行い、大量の利益を得ることは、業者全体の損益バランスを崩します。とくにリベート制(取引量に応じた還元)がある業者では、過剰なリベート獲得も問題視されることがあり、これも複数口座運用のリスク要因となります。

同一IP・デバイスからのアクセスが規約違反になることも

同一人物による複数口座の利用が問題となるのは、実はIPアドレスやPCの指紋情報などから特定されるからです。一部業者では明示的に「同一IPからの同一EA使用は禁止」と記載しているところもあり、これに違反した場合はアカウント凍結や出金停止が即時に実行される可能性があります。

複数口座運用が禁止される具体的なパターンとは?

前編では「なぜ複数口座運用が問題視されるのか」を解説しましたが、ここでは実際にどのような運用が“禁止対象”とされるのかを具体例とともに見ていきます。

パターン1:同一IP・同一ロジックの同時発注

もっとも一般的なNGパターンは、同一IPから同一EAで複数口座に同時に発注をかける手法です。業者によっては「一人一口座」規定があり、複数口座による同一タイミングの注文は“意図的なシステム回避”と見なされることがあります。

パターン2:アービトラージ的な複数業者間の同時注文

複数の業者に同一のEAを導入し、価格差を狙って利ざやを得る方法は、業者の視点から見ると明らかなリスクヘッジのないトレードとされ、非常に嫌われます。特に、STPやECN業者ではLPとの信頼関係を損なう要因になるため、利用停止措置がとられることもあります。

パターン3:リベート目的の取引量水増し

IB報酬(リベート)目当てで、同一ロジックの取引を複数口座で大量に行い、取引量のみを増やす目的の注文を繰り返す行為も問題です。このケースでは「利益を得る目的ではない取引」として、規約違反や悪質ユーザーと判断される可能性が高いです。

どこまでがセーフ?判断基準と回避のポイント

では、複数口座運用は完全に禁止されているのかというと、必ずしもそうではありません。業者ごとに方針が異なるため、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 同一IP利用の有無:業者によっては、同一IPからのアクセスを規制していない場合もある

  • 同一EAの使用制限:同一ロジックの同時稼働を制限しているか否かを確認

  • アカウント数の規定:1人1口座までしか許可しない業者と、複数口座OKの業者がある

  • 自社EAか他社EAか:提供元によっては「同時稼働禁止」などの利用規約がある

  • 取引履歴の透明性:不自然なタイミング・ボリュームでの発注があれば要注意

対策1:業者の利用規約を事前に熟読

業者の「禁止事項」や「利用条件」には、EAや複数口座に関する記述が含まれていることが多いです。必ず英語原文含めてチェックしましょう。

対策2:稼働タイミングをずらす

もし複数口座を使うなら、発注タイミングをずらすことで「同時発注」にはならず、問題回避になることもあります。

対策3:異なるEAを使用する

別ロジックのEAを各口座に導入すれば、「複数口座で同一取引を行う」という規約違反は回避できます。ただし同一IP制限がある業者では要注意。

まとめ

複数口座運用は、戦略次第では有効ですが、業者のルールに違反する可能性がある危険な運用です。「なぜそれをするのか?」「どこまでが許容範囲か?」を明確にし、リスク回避のために必要な対策を講じることが重要です。

EAによる自動売買では、効率性と手軽さを追求するあまり、ルールを軽視してしまいがちです。しかし、業者側もサーバーやリスク管理の観点から運用を厳格に見ています。目先の利益だけでなく、持続可能な取引環境を構築する視点を持つことが、海外FXで長く戦ううえで不可欠です。

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