「信託保全されてる」は信用できる?“名ばかり保全”の実態に迫る

なぜ「信託保全」と聞くと安心してしまうのか?

多くの海外FX初心者が「信託保全」という言葉を聞いた瞬間、安心感を覚えるのではないでしょうか。「顧客資金は分別管理されています」と謳われていれば、業者が破綻しても資金は守られる――そんなイメージを持ってしまうのも無理はありません。

しかし、海外FXの世界では「名ばかり信託保全」が存在します。つまり、制度として存在していても、その運用実態や保証内容が極めて曖昧で、実際にトラブルが起きた際には何の役にも立たないことがあるのです。

本記事では、筆者の体験とともに、そうした“見せかけの安心”がどのように形成されていたのか、その仕組みを前編で掘り下げていきます。

「信託保全あり」と表記された海外業者の実態

筆者が口座を開いたB社は、公式サイトに堂々と「顧客資金は信託保全されています」と明記していました。さらに、英国の法律に準拠した分別管理の枠組みがあること、万が一の場合は特定の第三者銀行を通じて返金される仕組みになっていると強調されていました。

しかし、よくよく調べてみると、以下のような疑問が浮かんできました。

  • 「信託先の銀行名が非公開」なのはなぜか?

  • 「法的義務ではなく、会社のポリシー」と書かれている根拠は?

  • 「返金の条件」にあいまいな文言(例:「当社が認定した場合」)が含まれている

このように、信託保全という言葉が掲げられていても、その具体的な中身や法的強制力には大きな差があるのが実情です。

海外FXにおける「信託保全」の種類と法的拘束力の違い

信託保全と一口に言っても、以下のような違いがあります:

  • 法的な信託保全制度:英国FCAなど、一部の先進国規制では明確な枠組みが存在する。

  • 会社独自の信託口座運用:一見「保全」されているが、破綻時の優先順位が低いケースも。

  • 第三者保証の名を借りた内部保証:グループ会社間の保証で、実質的な補償能力に乏しい。

特に日本語ページだけを見て安心してしまうと、上記のような微妙な違いを見逃してしまいます。後編では、実際にB社が破綻した際に何が起きたのか、そして信託保全がどこまで有効だったのかを具体的に検証していきます。


実際に“信託保全あり”業者が破綻したとき、何が起きたか

筆者が利用していたB社は、数年間にわたり安定した運用をしていたものの、突如として出金遅延が発生し、その後すぐにサイトがメンテナンス状態に入りました。数日後には完全にアクセス不能に。

問題はその後でした。メールで送られてきた通知には「信託保全口座に資金は確保されている」と書かれていましたが、いくら待っても返金の気配はありません。サポート窓口に問い合わせてもテンプレ回答のみ。調査を進めるうちに分かったのは、以下のような衝撃的な事実でした。

  • 実際には顧客資金と運転資金の混同が行われていた

  • 「信託口座」が実在しない、または第三者管理されていない

  • 海外法人のため、日本の法律では泣き寝入りしか選択肢がない

このように、表向きは「信託保全あり」とされていても、実態はほとんど形だけの仕組みにすぎなかったのです。

破綻後の顧客資金返還のプロセスと現実

返還プロセスとして案内されたのは、B社が提携していた弁護士事務所への請求書提出でした。しかしその請求書には、「保全資金が不十分な場合、返還率が減額される可能性がある」との注意書きがありました。

実際に返金されたのは、元本のわずか約7%。さらに、それまでの手続きにかかった書類郵送代や翻訳費、認証費用などで赤字になったというケースもあります。

信託保全とは名ばかりで、実際には以下のようなリスクが潜んでいます:

  • 名義が業者側の場合、勝手に動かせる

  • 信託契約が明文化されていない

  • 「保全金の上限」や「補償条件」が存在し、万能ではない

まとめ

海外FXにおいて「信託保全あり」という言葉は、それだけで安心材料にはなりません。

大切なのは、その内容の精査と、実際に保全が発動されたときの実績や対応事例の確認です。

日本の金融商品取引法に守られているわけではない以上、「何かあったら全部自己責任」という覚悟を持って挑む必要があります。

信託保全という表現に安心せず、冷静に業者選定を行うことが、資金を守る最大の防衛策になるでしょう。


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