見えない借金地獄…“追証”の罠に陥った若手トレーダーの末路

なぜ「少額資金で大きく稼げる」は落とし穴になりやすいのか

海外FXは「ハイレバレッジ」が魅力だとよく言われます。実際、数千円の証拠金で数十万円単位の取引が可能になり、成功すれば一気に資産を増やすことも夢ではありません。しかし、その裏側には「追証(追加証拠金)」という、致命的なリスクが潜んでいます。

今回紹介するのは、会社員として働きながら副業でFXを始めた20代のTさんの事例です。ネット広告で「5万円から月10万稼げる!」という文言にひかれ、国内FXではなく海外FXを選択。はじめは数千円の利益が出て「これはいける」と思ったそうです。

ところが数週間後、急な相場変動で強制ロスカット。そこで終わらなかったのが地獄の始まりでした。残高がマイナスになり、運営会社から「数万円の追加入金が必要」と通達。Tさんは「そんな話は聞いてない」と焦りますが、契約書には確かに明記されていたのです。

追証請求のメカニズムと“日本との違い”

追証とは、ロスカットによって口座残高がマイナスになったとき、証券会社がそのマイナス分の補填を求める仕組みです。日本の金融庁に登録されている国内FX業者は、法律により「ゼロカット(残高がマイナスになっても請求しない)」を導入しているため、追証のリスクはありません。

しかし、海外FX業者の場合はこの限りではありません。ゼロカットを“うたっている”業者も、細かい条件付きであることが多く、「特定の取引条件でゼロカット対象外」「裁量トレードでないと無効」などの注意書きがある場合もあります。

Tさんが使っていた業者も、表向きは「ゼロカット採用」とうたっていましたが、実際には適用条件が厳しく、急落時の損失には対応しないという条項がありました。契約書をしっかり読んでいなかったことが、Tさんにとって致命的な過ちだったのです。

追証を払わないとどうなるのか? 実際の請求プロセス

Tさんは請求を無視しようと考えましたが、業者側はメールや電話で繰り返し督促してきました。支払いを拒否すれば「法的措置をとる」といった文言も含まれており、精神的にも強いプレッシャーを感じたといいます。

実際に海外FX業者が個人に法的請求を行うケースは稀ですが、不安につけこんで支払わせる“心理的圧力”は非常に巧妙です。また、業者によっては海外の債権回収会社に依頼し、日本語で請求書を送ってくるケースも報告されています。

Tさんは家族や会社に知られたくない一心で、クレジットカードを使って支払いをしてしまいました。この時点で、借金は20万円以上に膨れ上がっていたのです。

以降ではTさんがどのように再起を図ったのか、そして「追証地獄」から抜け出すために何が必要だったのかを詳しく解説します。


追証を支払ったあとに待っていた“二次破綻”

Tさんは結局、精神的なプレッシャーと恐怖に耐えられず、クレジットカードで追証を支払ってしまいました。これにより一時的には業者からの督促は止まりましたが、当然ながら次に来たのは「カードの返済」という現実です。

支払いのためにリボ払いを選んだTさんは、翌月から月々の支払い額に苦しむことになります。収入は20代の会社員としては平均的でしたが、家賃や生活費、通信費など固定費も多く、返済は容易ではありませんでした。

そして、返済のプレッシャーから再びFXに挑戦。「取り返そう」という焦りから無理なトレードを繰り返し、再び資金を失うという悪循環に陥ってしまいます。これがまさに、海外FXにおける“追証スパイラル”の典型例です。

Tさんが再起に至るまでのリアルなステップ

転機が訪れたのは、TさんがTwitterで偶然見かけた「元借金FXトレーダーが再起した話」でした。その投稿をきっかけに、Tさんは自分の状況を誰かに相談してみようと考えます。最初は恥ずかしさもありましたが、匿名掲示板で似た経験をした人々と交流することで、「自分だけじゃなかった」と気づき、少しずつ気持ちが楽になっていきました。

次にTさんが行ったのは、家計の徹底見直しと副業の導入です。固定費を見直し、スマホを格安SIMに変更、不要なサブスクも解約。そして、夜間にできる在宅ワークを始め、月1万円〜2万円の副収入を得るようになります。

それでも借金完済までは1年以上かかりましたが、「お金の流れを見える化」し、少額でも“稼ぐ力”をつけることで、精神的にも金銭的にも少しずつ自信を取り戻していきました。

再発防止のために学んだ3つの教訓

Tさんが最終的に口にしたのは「勉強せずにやるFXほど危険なものはない」という言葉でした。最後に、Tさんの体験から見えてきた再発防止のための3つのポイントを整理しておきます。

  1. ゼロカットの“条件”を細部まで確認する

     業者がゼロカットを採用しているかどうかだけでなく、どのような条件で無効になるかも要チェックです。

  2. ハイレバレッジには“想定外”がつきもの

     たとえ一時的に成功しても、想定外の相場変動は避けられないと心得る必要があります。

  3. 借金を取り戻すための再投資は“悪手”

     損失を取り返す目的で再びハイリスク投資をすることは、ほぼ確実に破綻への道です。


まとめ

海外FXはたしかにチャンスもある市場ですが、同時にリスクも大きい世界です。特に「追証」に関しては、見えないところに地雷が潜んでいることも珍しくありません。今回のTさんの事例は、軽い気持ちで始めた副業FXがどれだけ深刻なダメージを与えるかを物語っています。

しかし、同時に「破綻からでも再起できる」ことも示してくれました。大切なのは、情報をしっかりと集め、自分の状況を見直し、焦らず一歩ずつ前に進むことです。


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