清算価値を下回っていないか?
再生計画において、裁判所が特に注意深く確認するのが「清算価値保障原則」です。これは、自己破産した場合に債権者へ配当される額(清算価値)よりも、個人再生での返済額が低くなってはいけないというルールです。
たとえば、自宅や車など一定の資産を所有している場合、それらを換金した場合の金額と比べて、再生計画で返済する金額が低ければ、債権者にとって不公平です。このような場合、裁判所は再生計画の認可を却下します。
実務上は、清算価値の評価が問題になります。資産の時価評価、ローンの残債、保険の解約返戻金、退職金見込額などが計算に含まれ、慎重に精査されます。つまり、計画書作成時には単に借金額や返済額だけでなく、資産評価との整合性も確認しなければならないのです。
支払いが現実的に可能かどうか?
再生計画では、返済額の妥当性だけでなく「実際に支払えるか」が重視されます。たとえば月々の返済額が収入の半分以上を占めるような計画では、現実的に生活が立ち行かなくなる可能性が高いため、裁判所が認可しないことがあります。
生活費や扶養家族の有無、突発的な支出に対応できる余力なども含めて、「持続可能な返済プラン」であることが求められます。裁判所は、家計の収支表や直近の通帳、家計管理の状況などから生活の安定度を読み取ります。
また、将来的な収入見込みだけに依存した計画は、収入の不確実性が高いと判断されるため、これも認可のハードルを上げる要因になります。返済の実行可能性は、机上の計算以上に現実的な生活設計の一部として見なされるのです。
債権者に不利すぎない内容か?
再生計画は債務者の生活再建を目的としていますが、それが債権者に著しく不利な内容であってはなりません。たとえば、一部の債権者だけに偏った返済計画や、資産を隠して最低弁済額に抑えようとするような不正は、当然ながら認められません。
また、再生計画案は原則として全債権者に同条件で適用されるべきものであり、特定の債権だけを優先する内容は、裁判所がチェックのうえ認可しない可能性があります。
実際、債権者からの異議申立てがある場合、裁判所は再度計画の合理性を精査します。この点も含めて、公平性を欠いた再生計画では認可が得られないという認識を持つことが重要です。
まとめ
再生計画の認可には、法的ルールだけでなく実務的な視点からの現実性や公平性も求められます。最低弁済額や継続的な収入、清算価値を下回らない返済額、生活に見合った支払い可能性、公平な債権者対応など、いずれも欠かせない要素です。
裁判所は形式的にチェックするのではなく、再生計画が実際に実行されるか、債権者が納得できるかという点を含め、総合的に判断します。そのため、再生計画作成時には専門家の支援を得ることが望ましく、細部にわたる準備と根拠提示が認可のカギとなります。
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