再生計画が認可されるには?裁判所がチェックする5つのポイント

個人再生と再生計画の関係とは?

個人再生手続きにおいて最も重要なステップの一つが「再生計画の作成と認可」です。再生計画とは、借金の返済方法や期間などを明確に記した計画書であり、裁判所がその妥当性を審査・認可することで初めて効力を持ちます。

読者の多くは「自分で計画を立てればそれでいいのでは?」と感じるかもしれませんが、実は裁判所のチェック項目をクリアしなければ認可されません。さらに、認可されなければ個人再生自体が不成立になるため、事実上の失敗です。

本記事では、再生計画が認可されるための5つのポイントを解説していきます。前編では再生計画の全体像と「最低弁済額のルール」「継続的な収入の要件」について丁寧に解説し、後編で残りの3つの審査ポイントを扱います。


最低弁済額のルールを満たしているか?

再生計画が認可されるためには、「最低弁済額」をクリアしている必要があります。最低弁済額とは、借金の総額に応じて決まる最低限の返済金額であり、これを下回る返済案は基本的に認められません。

たとえば借金総額が300万円以下の場合、最低弁済額は100万円です。300万円を超え500万円以下ならば総額の20%、500万円超で1,500万円以下であれば100万円+αという具合に段階的に規定されています。

このルールは、債権者保護の観点から設けられており、「本人の都合だけで自由に減らせる」仕組みではないという点を理解することが重要です。また、財産評価額や清算価値のルールにも関係するため、後述する評価との整合性も見られます。


継続的な収入が見込めるか?

もう一つの大きな審査ポイントが「継続的な収入があるかどうか」です。個人再生では、3年~5年の長期にわたる返済計画を実行できるかが問われるため、安定収入の有無は極めて重要です。

給与所得者であれば、勤務先や勤務期間、雇用形態などが判断材料となります。自営業やフリーランスの場合は、過去の所得実績や将来の売上見込みを証明する資料が必要です。パートやアルバイトであっても、継続性が認められれば問題ないケースもあります。

また、病気や離職によって収入が途絶える可能性が高い場合は、計画の実現可能性が疑問視され、認可されにくくなります。したがって、裁判所に提出する再生計画には、収入見込みの根拠もセットで示すことが求められます。


清算価値を下回っていないか?

再生計画において、裁判所が特に注意深く確認するのが「清算価値保障原則」です。これは、自己破産した場合に債権者へ配当される額(清算価値)よりも、個人再生での返済額が低くなってはいけないというルールです。

たとえば、自宅や車など一定の資産を所有している場合、それらを換金した場合の金額と比べて、再生計画で返済する金額が低ければ、債権者にとって不公平です。このような場合、裁判所は再生計画の認可を却下します。

実務上は、清算価値の評価が問題になります。資産の時価評価、ローンの残債、保険の解約返戻金、退職金見込額などが計算に含まれ、慎重に精査されます。つまり、計画書作成時には単に借金額や返済額だけでなく、資産評価との整合性も確認しなければならないのです。


支払いが現実的に可能かどうか?

再生計画では、返済額の妥当性だけでなく「実際に支払えるか」が重視されます。たとえば月々の返済額が収入の半分以上を占めるような計画では、現実的に生活が立ち行かなくなる可能性が高いため、裁判所が認可しないことがあります。

生活費や扶養家族の有無、突発的な支出に対応できる余力なども含めて、「持続可能な返済プラン」であることが求められます。裁判所は、家計の収支表や直近の通帳、家計管理の状況などから生活の安定度を読み取ります。

また、将来的な収入見込みだけに依存した計画は、収入の不確実性が高いと判断されるため、これも認可のハードルを上げる要因になります。返済の実行可能性は、机上の計算以上に現実的な生活設計の一部として見なされるのです。


債権者に不利すぎない内容か?

再生計画は債務者の生活再建を目的としていますが、それが債権者に著しく不利な内容であってはなりません。たとえば、一部の債権者だけに偏った返済計画や、資産を隠して最低弁済額に抑えようとするような不正は、当然ながら認められません。

また、再生計画案は原則として全債権者に同条件で適用されるべきものであり、特定の債権だけを優先する内容は、裁判所がチェックのうえ認可しない可能性があります。

実際、債権者からの異議申立てがある場合、裁判所は再度計画の合理性を精査します。この点も含めて、公平性を欠いた再生計画では認可が得られないという認識を持つことが重要です。


まとめ

再生計画の認可には、法的ルールだけでなく実務的な視点からの現実性や公平性も求められます。最低弁済額や継続的な収入、清算価値を下回らない返済額、生活に見合った支払い可能性、公平な債権者対応など、いずれも欠かせない要素です。

裁判所は形式的にチェックするのではなく、再生計画が実際に実行されるか、債権者が納得できるかという点を含め、総合的に判断します。そのため、再生計画作成時には専門家の支援を得ることが望ましく、細部にわたる準備と根拠提示が認可のカギとなります。


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