使えるバックテスト期間とは?2005年から2025年までの最適化戦略

バックテスト期間をどう決める?──20年分データに意味はあるのか

EA(自動売買ロジック)の開発や選定において、バックテスト期間の設定は成功と失敗を分ける重要なポイントです。とくに「長期間でテストしたから安心」と思い込みがちですが、実はその考え方には注意が必要です。なぜなら、相場の性質やボラティリティ、スプレッド環境、さらには取引ルールや政策金利など、時代ごとに大きく変化しているからです。

たとえば、2008年のリーマンショック時代と、2020年のコロナショック時代では、ボラティリティの急変やトレンド継続性に明らかな違いがあります。また、スプレッドが広がりやすかった旧MT4ブローカーの時代と、現在の低スプレッド環境では、同じロジックでも成績が大きく異なる場合があります。

つまり、「長い期間をテストしたから信頼できる」ではなく、「どの時期をどうテストしたのか」「その相場に合ったロジックかどうか」を判断する視点が求められます。

バックテスト期間ごとの特徴と注意点

バックテストでよく使われる代表的な期間ごとに、特徴と使いどころ、注意点を整理してみましょう。

  • 直近3ヶ月〜6ヶ月(短期テスト)

     → 最新の市場環境に対する順応性を確認するには最適。ただし、データ数が少なく運要素が大きいため過信は禁物。

  • 1〜3年(中期テスト)

     → 複数のトレンドやレンジ相場を含めた評価が可能。現在の環境との親和性を確かめやすい。

  • 5〜10年(長期テスト)

     → 市場の一巡(リスクオン/オフ周期など)を網羅できる。ただし、時代遅れの相場も混在し、ロジックが有効に機能しない年が含まれることも。

  • 10年以上(超長期テスト)

     → “統計的な安定性”や“ロジックの普遍性”を見るには有用。ただし、ブローカー仕様・スプレッド・実行環境の変化が影響しやすく、実運用では再現性に乏しいことも。

テスト期間の選び方に“正解”はあるのか?

結論から言えば、「この期間をテストすべき」という万能な正解は存在しません。なぜなら、EAのタイプや狙っている時間軸、エントリー頻度によって、適切な期間は変わるからです。

たとえば、1日1回程度のエントリーを想定しているデイトレ型EAなら、過去3年間で1000回以上のトレードがあるかが1つの目安になります。一方、スキャルピング型EAの場合は、より多くの取引データが必要になるため、最低でも1年以上のデータが求められることもあります。

また、「長期間でPFは安定しているが、勝率が下がってきている」「最近の半年間はドローダウンが増加傾向」といった変化を読み取るためには、複数期間を重ねて比較する“多期間検証”という手法も有効です。

以降では「戦略的に期間を分けて最適化する方法」や、「相場タイプ別に選ぶテスト期間の考え方」、さらに「期間の取り方が成績に与える影響と避けるべきNG例」までを掘り下げて解説します。


相場タイプごとに選ぶべきテスト期間の考え方

EAのタイプによって、テスト期間の選び方にも工夫が求められます。具体的には、相場環境(トレンド・レンジ)との相性や、ロジックの持続性を判断する材料になります。

  • トレンドフォロー型EA

     → 長期テスト(5〜10年)でトレンド発生頻度やドローダウン期間を確認することが重要。トレンドが出づらい年に苦戦している場合、フィルター条件を見直すヒントになります。

  • 逆張り型EA(レンジ狙い)

     → レンジが多い期間(例:2014年〜2016年)を重点的に確認し、ボラティリティの変化に対するロジックの耐性を確認。レンジ崩壊時の損失拡大をどう制御するかが鍵です。

  • スキャルピングEA

     → 直近1年〜2年の低スプレッド環境での再現性を重視し、バックテストの“現実性”が最重要。古いデータはスプレッド条件が異なり、誤認を招く恐れがあるため注意。

  • マーチンゲール型EAやナンピン系

     → 過去10年での“最悪ケース”を検出するには、あえて長期検証を行い、破綻する可能性がある条件を洗い出すほうが有用。極端な相場変動にどう対応するかが焦点。

テスト期間の設定で成績が変わる?──NG例とその背景

バックテスト期間の設定次第で、EAの成績は見かけ上いくらでも「良く見せる」ことができます。これは“最適化の罠”にも直結します。

よくあるNG例

  • ドローダウンを避けて都合のいい期間だけ選ぶ

     → 成績が良くなるような期間(トレンドが続いた時期など)を選ぶと、ロジックの“バブル”を見落としてしまう。

  • 同じテスト期間で複数ロジックを比較する

     → 一見公平に見えるが、そもそも各ロジックが得意とする相場が違うため、本質的な比較になっていない。

  • 2000年代のデータを盲目的に信頼する

     → MT4やヒストリカルデータの精度が低い時期もあり、特にスプレッド条件が現在と乖離している点に注意が必要。

  • 直近1年間だけで判断してしまう

     → 今後の相場がその年と似ているとは限らない。特に、ドローダウンの兆候を無視してしまうリスクが高い。

避けるための対策

  • 複数期間・相場局面を分けた検証を行う

  • 直近成績と長期安定性の両方を確認

  • 戦略の前提が変わっていないか再点検する

まとめ

バックテスト期間の選び方は、単に「長ければいい」「直近が良ければ安心」といった単純なものではありません。EAの特性と照らし合わせて、「どの相場環境に強いか」「何を検証したいか」を明確にしながら、意図を持った期間選定が必要です。

また、バックテストはあくまで“過去の相場に対する検証”であることを忘れてはいけません。実際の相場では、過去にない変動や予測不能なニュースが常に発生します。だからこそ、複数の期間で検証し、EAの強みと弱みを把握することが、長期運用におけるリスク管理にも直結するのです。


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