シンプルロジックが陥りやすい“ダマシ”とその対策
前編で紹介したような「MAクロス戦略」などのシンプルEAロジックには、初心者にも理解しやすいというメリットがある一方で、現実の相場で使うには注意が必要な点もあります。その最たるものが“ダマシ”です。
たとえば、レンジ相場ではMAのクロスが頻繁に起こるため、サイン通りに売買を行っても損切りばかりが続く状況になります。このようなときには、「トレンドフィルター」を加えることで対応可能です。具体的には、ADXなどのトレンド指標で相場の勢いを確認し、ある一定以上の強さがあるときだけクロスを有効とする仕組みを加えると、無駄なエントリーを減らせます。
また、クロス後にすぐにエントリーするのではなく、「クロス後に価格が一定方向へ○pips進んだらエントリー」など、フィルター兼トリガーとして動く条件を追加するのも有効です。
“1条件1行”の設計が見通しを保つ
ロジックが増えていくとコードも複雑になりますが、MQL4の記述においては「1条件=1行」ルールを意識することで見通しがよくなります。ロジックの条件式を読みやすく整理することが、開発後のバグ修正や検証にも大きな効果を持ちます。
初心者がつまずきやすい“バックテストと過剰最適化”
EA開発ではバックテストが欠かせませんが、初心者が陥りやすい罠が「過剰最適化(オーバーフィッティング)」です。たとえば、ある特定期間のチャートでパラメータを調整しすぎると、過去にはうまく機能していたとしても、将来の相場では通用しなくなります。
この問題を避けるには、以下のような工夫が有効です。
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複数の期間(過去5年や10年)でテストを行う
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複数の通貨ペア・時間足でロジックの再現性を検証する
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フォワードテストを必ず実施する(未来のチャートで動かす)
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「テスト期間内で最も悪かった時期」に注目してロジックを評価する
このような視点を持つことで、「たまたま儲かっただけのEA」から脱却できます。
まとめ
本記事では、MQL4を用いた「かんたんロジックEA」の設計とその実装、そしてその背後にある考え方や、開発初心者が陥りやすい落とし穴までを詳しく解説しました。重要なのは、「かんたん」だからこそ検証しやすく、改善の余地があるという点です。
複雑なロジックを組む前に、まずは1つの条件で機能するEAを作ってみること。そして、バックテストやフォワードテストで得た結果をもとに、小さな改善を繰り返していくことが、EA開発の本質であり楽しさでもあります。
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