EAとは何か?仕組みと特徴を理解する
海外FXにおける自動売買(EA:Expert Advisor)は、MetaTrader4(MT4)やMetaTrader5(MT5)といったプラットフォーム上で稼働するプログラムです。EAは、一定のロジックに従ってエントリーや決済を自動化するツールであり、人的ミスを排除した戦略運用が可能になります。
EAはMetaQuotes社が提供する専用言語「MQL4(またはMQL5)」で記述され、シグナルの条件設定、ロット数、時間帯、リスク管理など、細かなカスタマイズが可能です。特にMQL4は、MT4ユーザーの間で広く使われており、情報も豊富です。
自動売買の最大の利点は「感情を排した取引」ができることですが、その反面で「想定外の相場変動への柔軟対応ができない」などのデメリットも存在します。EAを理解するには、メリット・デメリット両方を押さえておくことが重要です。
MQL4とは?特徴と学習の進め方
MQL4(MetaQuotes Language 4)は、C言語に似た構文を持ち、MT4上でEAやカスタムインジケーターを構築するための専用言語です。特徴は以下の通りです。
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イベント駆動型:特定のイベント(ティック更新、時間経過など)をトリガーに処理が行われる。
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標準ライブラリが豊富:移動平均やRSIなどのテクニカル指標は標準関数で扱える。
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バックテストが容易:MT4内で過去データを用いた検証ができる。
学習を始める際は、まず公式ドキュメントと、ネット上の無料教材(日本語・英語問わず)を活用し、基本文法に慣れることが第一歩です。次に、既存のEAコードを読み解きながら「どうやって戦略が構築されているか」を分析することで、理解が深まります。
自作EAに挑戦する際の準備と心構え
自作EAを開発するには、まず「どのような戦略を自動化したいか」を明確にすることが出発点です。トレンドフォロー型なのか、レンジ逆張り型なのか、それによって必要なテクニカル指標も異なります。
また、コードを書く前に次の準備が必要です。
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戦略のロジック化:感覚的な手法ではなく、明確な数値条件に落とし込む。
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検証データの確保:信頼できるヒストリカルデータを用意しておく。
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失敗を前提にする:一発で完成させるのではなく、検証・修正の繰り返しが基本。
特に初心者にとっては「小さな成功体験」を積むことが重要です。最初は“シンプルすぎるくらいのEA”を作ることを意識し、そこから改良を加えていくことで自然にスキルが上がっていきます。
次回の後編では、実際のコード例や構文の解説、典型的なミスとその対処法、そして「動くEA」を作るための現実的なステップを紹介します。
実際のMQL4コードを見てみよう
前編で概要と準備を理解したうえで、ここからは実際のMQL4コードを用いてEAの基本構造を見ていきましょう。以下は、もっともシンプルな「ゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売る」タイプのロジックのサンプルです。
このコードでは、移動平均の交差を検出し、それに応じて注文を発行しています。エラー処理やリスク管理は含まれていないので、実運用では大幅な改良が必要です。
よくあるミスとデバッグの基本
初心者が陥りやすいのが「EAが動かない」「意図通りにエントリーしない」といった事態です。その主な原因と対処法は以下の通りです。
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条件判定が甘い:比較条件が1ティックだけで成立してしまい、ノイズに反応するケース。
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マジックナンバー未設定:複数EAを同時に稼働させた場合に混同が起きる。
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ティックごとの処理重複:過剰な注文が発生するリスクがある。
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パラメータの初期化漏れ:未定義の変数が存在してエラーとなることも。
デバッグ時には、「Print()」関数を使ってログ出力し、処理の流れを確認するのが基本です。また、MT4の「ストラテジーテスター」機能を活用することで、過去データによる検証が可能です。
EAを完成させるための5つのステップ
自作EAを完成させるには、以下の5つのステップを踏むことが現実的です。
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戦略アイデアのロジック化
感覚的な判断を数式・数値に落とし込む。
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コード設計とモジュール分解
損切り・利確・エントリー判定など、処理を明確に分ける。
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バックテストとパラメータ調整
過去データで検証し、最適な条件を見極める。
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フォワードテストと改善
デモ口座で実運用に近い形で稼働テストを実施。
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リスク管理の組み込みと運用
ロット制御やスリッページ管理など、実戦向けの対策を施す。
これらを繰り返し、少しずつ精度を上げていくのがEA開発の本質です。「書いたら終わり」ではなく、「育てる」感覚で取り組みましょう。
まとめ
EA開発は、金融知識とプログラミングの融合領域であり、最初は難しく感じるかもしれません。しかし、基本的な構文を理解し、小さなEAから作り始めることで着実に前進できます。特にMQL4は初心者に優しく、情報も多いため、自作EAに挑戦するには最適の環境です。
次回は、より発展的なロジック(複数時間足の組み合わせ、フィルター条件追加、損益計算など)に踏み込んだ「ステップアップ型EA構築術」を解説していきます。
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