AIで“連続パターン”を検出せよ!ティックデータの特徴量エンジニアリング入門

「連続性」はAIの武器になる

AIを用いたトレード戦略において、ティックデータの“連続性”をどう捉えるかは非常に重要です。たった1回の価格変動より、数秒・数分単位での継続的な値動きの方がシグナルとして意味を持つからです。

たとえば、10ティック連続で上昇している状態と、上がったり下がったりを繰り返す状態とでは、今後の予測にも大きく差が生まれます。こうした“連続パターン”を見抜くには、単なる統計処理では限界があります。

本記事では、「AIで連続的なパターンをどう捉えるか?」という観点から、特徴量エンジニアリングの基本と応用を2回に分けて解説していきます。

前編ではまず、「連続性」をモデルに伝えるために必要な前提知識と、基礎的な特徴量設計の考え方を紹介し、後編ではRNNやCNNのような深層学習モデルとの連携を見据えた応用技術に進みます。

ティックデータにおける“特徴量”の考え方

ティック=一瞬の情報。だからこそ“文脈”が要る

ティックデータは、時間と価格(Bid/Ask)を中心とした高頻度データで、通常は数秒未満で変化します。しかし、AIにとっては一つひとつのティックが“点”でしかなく、意味のある“線”や“面”として捉える工夫が必要です。

たとえば以下のような特徴量が考えられます:

  • 過去n件の価格平均・最大・最小
  • nティック連続で上昇/下降している回数
  • ボラティリティの推移(標準偏差など)
  • 価格差(スプレッド)の変動
  • ティック到着間隔(レイテンシ)

これらは全て、“単なる現在の価格”ではなく、“一定期間における動きのパターン”を数値化したもので、AIに「いま、どんな状況か?」を伝える役目を持ちます。

パターン検出に使える“連続特徴量”の設計法

ティックの連続性をモデルに伝える方法には、以下のような工夫があります。

シンプルなカウント方式

連続して価格が上昇・下降した回数を数えるだけでも、「トレンドの兆し」がつかめます。たとえば「5ティック連続上昇」であれば、短期的な買いシグナルと見なせることがあります。

差分系列と変化の方向

価格の差分(現在-前回)を系列として記録し、「+」「-」の並びをパターンと見なす方法。これにより、変動の“方向性”を特徴として扱えます。

統計量の時系列展開

一定ウィンドウ内の価格平均・分散・標準偏差を連続的に記録し、系列としてモデルに渡します。これにより、マーケットの“落ち着き”や“荒れ具合”を把握できます。


以降ではこれらの設計がどのようにAIモデルと連携して活用されるか、実際の処理手順や注意点を交えて詳しく解説します。


AIモデルに活かす!連続特徴量の具体的活用法

前編では、連続的な価格変動のパターンを捉えるための基本的な特徴量設計について紹介しました。後編では、それらの特徴量がどのようにAIモデルと連携されるか、さらに深掘りしていきます。

RNN・LSTMを活用した時系列学習

連続性を捉えるために相性が良いモデルとして、リカレントニューラルネットワーク(RNN)やその改良型であるLSTM(Long Short-Term Memory)があります。これらのモデルは、過去の価格変動を記憶しながら学習を進めるため、「連続する上昇・下降」のような時系列パターンを自然に捉えることができます。

入力特徴量としては、前編で説明した「差分」「連続回数」「ボラティリティ」などの系列データを使います。LSTMは特に、トレンドの“前兆”のような緩やかな変化を検出するのに優れています。

CNNによるパターンマッチング的アプローチ

一方、時系列データを「画像的」に捉える方法もあります。たとえば、一定期間の価格差分を1次元の「信号」として扱い、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)でパターンを検出します。

これは、チャート形状のような局所的な形(山・谷・三角持ち合いなど)を“画像のように”捉えられる点が魅力です。特に短期トレードでは、CNNの高速な認識力が役立つケースもあります。

実装上の注意点とよくある落とし穴

ウィンドウサイズの設定は要注意

連続特徴量を作る際、「どのくらいの範囲で情報をまとめるか」というウィンドウサイズの設計は極めて重要です。大きすぎると直近の変動が薄まり、小さすぎるとノイズを拾いすぎます。トレードスタイル(スキャル、デイトレ、スイング)に応じた調整が必要です。

ラベル設計とペアで考えるべし

特徴量は、正しくラベル(正解データ)とセットで設計しないと、AIモデルが学習すべきパターンと無関係な情報を強調してしまう危険があります。たとえば「5分後に上昇しているかどうか」をラベルにするなら、特徴量もその5分前までの動きに集中させるべきです。

オーバーフィッティングの回避

連続性の強いパターンは学習しやすい反面、特定の期間・銘柄に依存しやすく、オーバーフィッティング(過学習)のリスクも高くなります。定期的なモデル更新や、クロスバリデーションを用いた汎化性の確認が不可欠です。

まとめ

連続的な価格パターンは、ティックデータの持つ貴重なシグナルの一つです。単なる数値の羅列にとどまらず、「どんな変化が続いているか?」という“流れ”をAIに伝えるためには、工夫された特徴量設計が求められます。

本記事では、前編で特徴量設計の基本と考え方、後編でモデルとの連携や注意点までを網羅的に解説しました。こうした理解をもとに、自分のトレードスタイルに合ったデータ処理とAI活用を進めていくことが、海外FXの高度な自動化戦略につながるでしょう。


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