ロスカットとゼロカットの基本的な違いとは?
FX初心者が最初に戸惑いやすいのが、「ロスカット」と「ゼロカット」の違いです。どちらも損失を限定するための仕組みですが、性質や働くタイミングが大きく異なります。
ロスカットは「証拠金維持率が一定以下になると自動的にポジションが決済される仕組み」です。これは投資家の損失を一定水準で食い止め、追加入金の必要を減らす目的で導入されています。国内FXでも広く採用されています。
一方、ゼロカットは「相場の急変などで証拠金以上の損失が出た場合でも、マイナス残高をゼロにリセットしてくれる制度」です。こちらは主に海外FX業者が提供しており、追証(追加の損失負担)を回避できる安心感が魅力です。
つまり、ロスカットは「損失の拡大を途中で止める防御策」であり、ゼロカットは「最悪の事態が起きた後に帳消しにする救済措置」といえるでしょう。
ロスカットの仕組みと注意点
ロスカットの仕組みは、証拠金維持率に基づいて作動します。多くの海外FX業者では、証拠金維持率が20%以下になると自動ロスカットが発動する設計です(業者により設定値は異なります)。
具体例で見るロスカットの流れ
- 口座資金:10万円
- 保有ポジション:USD/JPYで5万通貨の買い
- 必要証拠金:5万円
- 評価損が4万円になった時点で、証拠金維持率は120% → まだ安全圏
- 評価損が9万円に達すると、証拠金維持率は10% → ロスカット発動
このように、損失が増えすぎて証拠金維持率が基準を下回ると、強制的にポジションが決済されるのです。これにより、さらなる損失の拡大を防ぐのがロスカットの目的です。
ロスカットが間に合わないケースも
ただし、相場が急変した場合、システムの処理が追いつかず、ロスカットが「間に合わない」ケースもあります。その結果、証拠金を大幅に下回る損失が発生することがあり、これが“マイナス残高”を招く一因になります。
ゼロカットの特徴と海外FXにおける意義
ゼロカットは、ロスカットが間に合わなかった際に適用される「救済制度」です。相場の急変やテロ・地震などの突発的な要因で想定外の損失が発生した場合でも、マイナス残高をゼロに戻してくれるため、トレーダーにとっては最後のセーフティネットになります。
ゼロカットの発動例
たとえば、スイスフランショック(2015年)のような一瞬で数百pips動くような相場では、ロスカットがまったく機能せず、数百万円のマイナス残高を抱えたケースもありました。しかし、ゼロカットが適用されたことで、損失は「入金額まで」で済み、トレーダーは追加の支払いを求められませんでした。
前編では、ロスカットとゼロカットの概念的な違いや基本的な仕組みを整理しました。後編では、それぞれの制度が重なり合う場面、誤解されやすいポイント、そして注意すべきリスク管理のポイントを詳しく解説していきます。
ロスカットとゼロカットの混同によるリスク
ロスカットとゼロカットは性質が異なるにもかかわらず、「どちらか一方があれば安全」と思い込んでしまう初心者も多いのが実情です。しかし、両者は補完関係にあり、それぞれの限界を理解しないとリスク管理に支障をきたします。
たとえば、ロスカットが機能していればゼロカットの出番は基本的にありません。逆に、ロスカットが間に合わなかった場合にゼロカットが活躍するわけですが、ゼロカットがあるからといって無制限にリスクを取ってよいわけではありません。誤解によって、証拠金全額をハイレバで運用し、あっという間に口座資金を失うケースもあります。
ロスカットは通常時、ゼロカットは非常時の保険
初心者は「ゼロカットがあるから安心」と考えがちですが、これは非常時の措置です。通常の損失を防ぐ役割はロスカットが担っています。したがって、普段から証拠金維持率を確認し、ロスカットラインに近づかないよう管理するのが基本となります。
ゼロカットの対象外となるケースに注意
すべてのFX業者がゼロカットを適用しているわけではありません。また、以下のような条件や例外が設定されていることもあります。
- 意図的なシステム悪用(例:指標発表時の両建てなど)
- 社内規定に違反した場合
- 法人アカウントの場合は対象外となる業者も
- ボーナス口座・キャンペーン口座には適用外など
つまり「ゼロカットあり」と書かれていても、全損失がカバーされるわけではなく、利用規約や補足文に注意する必要があります。特に高レバレッジを提供している業者では、ゼロカット制度の詳細が非常に重要になります。
まとめ
ロスカットとゼロカットは、どちらも損失リスクに対処するための仕組みですが、その働き方や目的は大きく異なります。
- ロスカットは、損失が一定水準に達した時点で自動的にポジションを清算し、損失の拡大を防ぐための仕組み。
- ゼロカットは、急激な相場変動でロスカットが間に合わなかった場合に、マイナス残高をゼロに戻してくれる救済措置。
両者を正しく理解し、併用して資金管理を行うことで、海外FXにおける不安やリスクを軽減できます。安心して取引を続けるためにも、制度の違いや業者ごとの仕様をしっかり把握しておくことが重要です。
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