自動売買(EA)とは?仕組みと基本の考え方
MT4やMT5におけるEA(エキスパートアドバイザー)は、自動で売買を行うプログラムのことです。トレーダーの代わりに市場の条件を監視し、あらかじめ設定した条件に従って注文を出します。裁量トレードと異なり、感情に左右されずに一貫したトレードができるのが特徴です。
EAは専用のプログラミングが必要で、多くのEAは外部の販売サイトや開発者コミュニティから入手できますが、自分で構築することも可能です。ルールの明確化や検証を通じて、より納得のいく戦略構築ができるため、EAの自作はFX学習にも有効な手段です。
EAを導入するまでの準備ステップ
EAを使うには、まずMT4/MT5にEAファイルを導入する必要があります。以下のステップで進めるのが基本です。
- EAファイル(.ex4または.ex5)を取得。
- MT4/MT5の「ファイル」→「データフォルダを開く」から「MQL4(MQL5)」→「Experts」フォルダに格納。
- プラットフォームを再起動し、ナビゲーター内の「エキスパートアドバイザ」から対象EAをドラッグ&ドロップ。
EAによっては、外部パラメータを設定可能なものもあります。Lot数、トレード時間帯、許容スプレッドなど、EAの挙動を細かくカスタマイズできるようになっています。また、リアル口座に導入する前に、必ずデモ口座での動作確認とパラメータ調整を行うのが安全です。
さらに、MT4/MT5の「自動売買」ボタンをオンにしないとEAは動作しないため、忘れずに設定を確認しましょう。
プログラミングせずにEAを作る方法とは?
自作EAといえば、MQLでのプログラミングが必須と思われがちですが、最近ではノーコード系ツールも登場しています。たとえば、プログラミングが苦手な方でも、ノーコード系のツールを使えば簡単なルールでEAを作成できます。
こうしたツールは「〇〇条件になったら買い」「〇〇で利確/損切り」などをGUIベースで設定できるため、裁量トレードを数値化する感覚でEA化できます。もちろん、詳細なロジックになると限界はあるものの、初学者がEAの挙動を理解するには良い入口になります。
EAのバックテストと最適化:信頼できる結果を得るために
EAを実際に運用する前には、必ずバックテストを行って過去の相場に対する成績を検証する必要があります。バックテストとは、過去の価格データを用いてEAの挙動を再現し、どのような結果が得られるかを確認する作業です。
MT4/MT5のストラテジーテスターでは、EAをチャートに適用した上で通貨ペアや期間を指定し、詳細なパラメータを設定してテストが行えます。バックテスト結果には、収益曲線、勝率、最大ドローダウン、プロフィットファクターなどが表示され、EAの安定性やリスクを判断する材料になります。
また、最適化機能を使うことで、複数のパラメータ組み合わせの中から最も良い結果を出す設定を探すことも可能です。ただし、最適化のやりすぎは「カーブフィッティング(過剰適合)」を招き、実運用で機能しないリスクもあるため注意が必要です。
実運用の注意点と安定稼働のコツ
EAを実際の口座で稼働させるときには、いくつかの重要な注意点があります。まず、EAは常にMT4/MT5が稼働している必要があり、長時間運用には工夫が必要です(後述)。
また、ブローカーの取引条件やスプレッド、約定速度などがEAの成績に影響を与える場合があるため、EAを使う前に自分のブローカーが対応しているかを確認する必要があります。特にナンピン型やスキャルピング型のEAは、ブローカーとの相性がパフォーマンスに大きく影響します。
さらに、実運用においては以下の点にも注意しましょう:
- ロット数の調整:過剰なロットは資金を急激に減らすリスクがある
- 損切り設定:資金管理を自動化するためには明確な損切りルールが不可欠
- 定期的な見直し:相場の変化に応じてEAの見直しが必要になることもある
EA戦略の構築例と考え方の整理
EAを自作する場合、まずは「どんな相場で利益を出したいのか」を明確にする必要があります。たとえば、トレンド相場で勝負したいのか、レンジ相場を狙うのか、あるいは指標発表後の短期的なボラティリティを活用したいのか、戦略ごとに求められるロジックは異なります。
戦略構築では以下のような要素を明確化することがポイントです:
- エントリー条件(例:移動平均線のクロス、RSIが30以下など)
- エグジット条件(例:固定pipsで利確/損切、トレーリングストップの活用)
- フィルター(例:高スプレッド時はエントリーしない、経済指標前は停止)
複雑な戦略ほどパフォーマンスが向上するとは限りません。むしろ、シンプルなロジックで明快なルールを構築するほうが、後の検証や調整がしやすく、結果として安定した運用につながります。
EAは一度作って終わりではなく、検証→修正→再テストのループを通じて改善していくものです。学習と実践を繰り返しながら、自分なりのスタイルを築いていくことが、EAトレード成功の鍵です。
EA構築における心構え
EAは「誰でも勝てる魔法の箱」ではありません。成功しているEAの多くは、想定された相場環境でのみパフォーマンスが良好であり、環境が変わると急に損失が膨らむこともあります。そこで、以下は特に意識しましょう。
- 過剰最適化(カーブフィッティング)に注意:バックテストに合わせすぎると実戦では通用しないことが多いです。
- 「万能型」より「特化型」:レンジ相場に強い、トレンドに乗るのが得意など、相場条件を絞った設計の方が安定しやすい傾向があります。
- 稼働後もメンテナンスが必要:市場は常に変化するため、EAのロジックも見直しや再検証が求められます。
- 資金管理が最優先:優れたEAでも、ロット設定を誤ればすぐに資金が尽きてしまいます。
EAを継続的に活用していくためには、開発面や運用環境の理解も欠かせません。
EAのコード構成とMQLの基礎知識
MT4/MT5の自動売買を動かすには、MQL言語(MetaQuotes Language)を用いたコードの作成が必要です。MT4ではMQL4、MT5ではMQL5が使われますが、基本構造には共通点があります。
EAの基本的な構成は以下のような要素で成り立っています:
-
init()
関数:初期設定を行う関数(MT5ではOnInit()
)。 -
deinit()
関数:EAの終了時に処理を行う関数(MT5ではOnDeinit()
)。 -
start()
関数:MT4でのメインループ(MT5ではOnTick()
)。 - 条件分岐:インジケーターの値や価格変化に応じて売買を実行。
-
注文関数:
OrderSend()
(MT4)、OrderSendAsync()
(MT5)などを使って実際のエントリーを行います。
MQLはC言語に似た構文で、条件式やループ、関数の定義も可能です。複雑なロジックを実装する場合は、関数を分割したり、外部ファイルから条件を読み込むこともあります。
初心者向けEA構築ツールの比較
EA開発を支援してくれるツールは数多くあります。
中でも代表的なものには以下があります。
- EA Builder:ブラウザ上でインジケーターの条件を設定するだけでEAを生成。
- FxPro Quant:ドラッグ&ドロップ形式でロジックを構築。
- MQL5ウィザード(MetaEditor内):基本的なテンプレートからロジックを組み立て可能。
これらのツールを使えば、基本的なロジックであればコードを1行も書かずにEA化できます。ただし、ロジックが複雑になるほど制約も多くなるため、「どこまでを自動化するか」の設計が重要になります。
VPSを活用した安定稼働の工夫
EAを24時間稼働させるには、自宅PCの常時起動では不安定な面もあります。そこで活用されるのがVPS(仮想専用サーバー)です。
- 常時稼働:停電や再起動の心配なく、MT4/MT5を常時動かせます。
- 低遅延:ブローカーと同じ地域にサーバーを置けば、注文の約定スピードが向上します。
- 外出先でもアクセス可能:リモートデスクトップ経由でスマホや別PCからも操作可能です。
VPSサービスは有料(月額1,000〜3,000円が目安)ですが、信頼性を考慮すると自動売買ユーザーにとっては有効な選択肢となります。ブローカーによっては一定条件でVPSが無料提供されることもあります。
まとめ
EAは、時間がない個人トレーダーにとって強力な味方になります。
MT4/MT5を使ったEA運用は、プログラミング技術だけでなく、戦略設計や資金管理、環境構築に至るまで多くの知識が求められる領域です。しかし、一度仕組みを整えてしまえば、感情に左右されない取引や、複数通貨ペアの同時監視など、人間には難しい作業を効率的にこなすことができます。
「コードが書けない」と感じる方も、ノーコードツールやEA配布サービス、VPSとの連携といった支援策を活用することで、EA運用の第一歩を踏み出すことが可能です。自分に合ったスタイルとリスク許容度を踏まえながら、無理のない範囲でEA運用を試してみるのが良いでしょう。
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